SSB送信機の
Automatic Level Controlを略してALCと言います。
一般的にはSSB送信機の(あくまでも一般的には)ALCメータが振ると急激に歪が増えるとされています。
確かに真空管時代の送信機は終段にAB1級と言われる動作点を持つ増幅器を使っていてAB1級はグリッド電流が流れる直前までは歪が少なくグリッド電流が流れ出すと急激に歪が増える特性があります。
直線性を確保したい場合AB1級増幅器はグリッド電流が流れない領域で使うのが前提とされています。
真空管式送信機の場合はそのグリッド電流を利用しALC電圧を発生させ、その電圧を利得可変素子へ接続し利得を下げています。
(高周波整流型は別)
グリッド電流=ALCメータですのでALCメータが少しでも振れればグリッド電流が流れ、急激に歪が増えていることを示しますが回路・構成その他、色々な条件により歪が増える度合いは変わります。
さて、今の時代、真空管の送信機は珍しくなりました。
FET・トランジスタ等の素子で増幅器を作った場合、真空管のAB1級増幅器のグリッド電流の様な指標がありません。
真空管のAB1級増幅器の場合はグリッド電流が流れると歪が多くなるので流さないでくださいね。と言うのが指標なのですが
一般的なソリッドステート式送信機の場合のALCはどうなっているのでしょう?
ソリッドステート式の増幅器の場合はそのしるし指標がない為
「ある所」と出力電力を比較し設定された「ある所」で出力を制限すると言う方法を使っています。
(昔で言う高周波整流型です。)
「ある所」とは、
1.ある時間連続で電波を出しても石が壊れない出力
2.ある時間連続で電波を出しても電源が壊れない出力
3.ある時間連続で電波を出してもローパス等の部品が壊れない出力
4.例えば三次歪がマイナスなんとかdBの時の出力
超高級無線機は別でしょうけど(本当は知らない)
一般的には1・2・3が重視され4は4の次位です。
現実は4は軽視されている機械が多いようです。
と言うことは
普通のトランシーバはALCが振ると電波が汚くなるとも言えないしALCが振っていないから電波が綺麗とも言えないと言う事です。
また、出来の悪い一般的なソリッドステート送信機はパワーをしぼっても真空管送信機のように素直に歪が少なくなりません。
軽く使っても電波は弱くなるが電波が綺麗になる保障はありません。
ここで間違ったらいけないのはALCが振ると言うのは振ると言っても10分の1とか10分の2位、振るという意味です。
どのような機械でもバンバン振らせると色々な所が飽和して歪んで来ます。
CW時やSSBでマイクゲインを一杯上げて「がなった」時の五分の1位がALCの通常時の振らせても良い量でしょうか?
(飽和していないと言う目安)
本当はALCが振り始めるマイク入力レベルとALCが飽和し始めるマイク入力レベルを計っておくともっと適正なレベル設定が出来ますが少し測定器が必要ですね。
デジタルモードの場合特に
定説の様にパワーを三分の1に下げてとかALCは絶対振らしたらだめと良く言われます。
これは真空管時代の定説であると言うことを理解してください。
SSBでも勿論同じです。
綺麗な電波を出すことは勿論ですが、ある程度強力な電波を出すことも大切です。
免許されたパワーを有効に使おうではありませんか?
お空で定期的に複数の皆さんにレポートを頂く事も必要でしょう。
それから、たまには自分の電波を聞いてみましょう。
それは非常に大切なことです。
de JA5FNX