スペクトランと気合で
「貧乏なのよ!受信周波数校正法」
Bunshiro Tamura / JA5FNX
図入りで見たい方はPDF版をどうぞ!
https://bunshiro.love/uploads/bnjskh-01.pdf
はじめに
何年かぶりに無線に復帰した今日この頃ですがPSK31やWSJT等のデジタルモードで狂ったように遊んでいます。
最近の機械は高安定度水晶発振器が入っており(IC-7000は0.5ppm/IC-7800では0.05ppm)かつてのFDAM-3の様な周波数変動はありません。
FNXは貧乏無線局ですのでIC-7800を買える訳でもなく・・・・・でも、ある程度正確な周波数が判らないと6m以上の周波数でWSJTでの待受け受信など出きるわけも無く思いついたのであります。
どの程度の周波数精度が必要なの?
これは難しい問題です。フィルタの帯域外に出たらいけないのは解りますが10Hzが1Hzになった場合、了解度がどれ位上昇するか僕にはわかりません。
「フィルタの帯域外に出たら・・・」と冗談を言いましたが0.05ppmは1MHz0.05Hz、10MHzで0.5Hz、100MHzで5Hz、1000MHzで50Hz、10GHzで500Hzになります。
これは10GHzでCWの待ちうけには少し不十分かもしれません。また、144MHzでのSSB通信では不自然さを感じる人も居るでしょう。
0.5ppmでは当然十倍になりますのでもっと問題になるかもしれません。
WSJTのJT65では-25dB以下の微弱信号の解読には数Hzが解読の鍵と言われています。
「貧乏なのよ!受信周波数校正法」としては0.05ppm以上0.01ppmを目標にしたいのですがどうなる事やら!
周波数校正用受信機(トランシーバ)の条件
「貧乏なのよ!受信周波数校正法」を行う受信機の仕様に下記の条件があります。
一つの正確な基準発信器で全体の周波数を管理している機械(一元管理・一発管理・高安定度水晶発信器内蔵又は内蔵可能・・・・と言われるもの)
以上の条件はTS-690・TS-830以降の多くの機械で条件を満たしていると思われます。
ソフトウェア
周波数計測
1Hz以下の周波数読み取りが正確に出来るI2PHDさんの作られた「Spectran Ver.2」http://www.weaksignals.com/ の http://digilander.libero.it/i2phd/spectran.html
—-スペクトランのサイトから—-
Spectran is a program to do real time or deferred spectral analysis / waterfall display, in addition to real time audio filtering (band pass, denoising, band reject and CW peaking) of audio signals, using the PC sound card to digitize the input analog signal, or taking as input a WAV file. Its characteristics are well suited to dig weak signals buried into noise, thanks to a selectable bin size down to 21 millihertz. On the opposite site, it can visualize normal CW signals, resolving individual dots and dashes (with a reasonably fast PC).
サウンドカードサウンドカードサンプリングクロック計測
サウンドカードサンプリングクロックを正確に測るためにJE3HHT森様が作られた「Welcome to JE3HHT’s page」 http://www33.ocn.ne.jp/~je3hht/index.html 「MMVARI for Windows」を使わせていただきました。目的外かもしれませんが大変素晴らしいです。
エクセルで作った簡単な計算表
Clock-RXやスペクトランから読み取った数値を入力すると周波数偏差等の結果が得られます。「貧乏なのよ!周波数校正計算表」 https://bunshiro.love/uploads/binbou-freq-cal.xls
マイクロソフトエクセル
計算は簡単ですので電卓でも出来ますが表計算ソフトを使うと簡単に出来ます。
パソコンとオペレーティングシステム
上記のソフトウェアが快適に使える物
周波数測定の準備
サウンドカードサンプリングクロックの計測
「MMVARI for Windows」を使ってオプション(O)サウンドカードの校正(C)を行いClock-RXを計測します。
Clock-RXはメインウィンドの左下にも表示されています。
そのClock-RXは周波数測定に必要な大切な数値ですので必ずメモをしてください。
スペクトランの設定
メインウィンド右上に表示されている
Ticks : 60
Show Controlsボタンを押しコントロールに設定します。
Resolution 0.042Hz
Avg Factor 4
Vert. にチェック
メニューのセットアップで設定を保存しておくと便利です。
(図)
受信機表示周波数設定・シフト周波数設定と電波形式(LSBモード)
受信機からビートを検出するため周波数をシフトさせる必要があります。
受信機電波形式は計算の便宜上LSBモードを使いますので上に1000Hzシフトさせる必要がありますので受信機表示周波数を10.001000MHzに設定します。
スピーカからは約1000Hz付近のビートがモニタできているはずです。
受信機表示周波数は周波数測定に必要な大切な数値ですので必ずメモをしてください。
受信機とパソコンの接続
パソコンのライン入力と受信機のオーディオ出力を接続します。デジタルモードのインターフェースをお持ちの方はお使いいただけると思います。パソコンのスピーカから受信音がモニタ出来る様にパソコンの入出力ボリュームコントロールを設定します。
ビート周波数測定
スペクトランを起動させます。
まず、中央少し上にあるグレー色の帯(周波数ゲージ)の設定を行います。この帯を左右にドラッグさせると表示分析する周波数の範囲が変わります。
今受信されている電波のビートはおそらくシフト周波数の±何百Hzに出ていると思われますのでシフト周波数付近に周波数ゲージの周波数範囲を合わせます。
周波数ゲージの範囲内に合わせた後、1分から2分すると表示が安定します。
この時間は分解能とパソコンの処理能力によって大きく変わります。
スペクトランはこの周波数ゲージ範囲内のスペクトラム分析を行い一番レベルの高い周波数を画面左上の部分に「Peak at XXX.XXHz(xxdB)」と表示します。
(図)
上記は3.925MHzのNSBを受信した様子です。
画面左上の部分の「Peak at 1001.57Hz(-25.4dB)」の1001.57Hzは周波数測定に必要な大切な数値ですので必ずメモをしてください。
計測データの確認
正確な周波数を求めるために必要な数値が集まりました
1. サウンドカードサンプリングクロック(Clock-RX)の計測
2. 受信機表示周波数
3. シフト周波数設定
4. 電波形式(LSBモード)
5. スペクトランピーク読取 (「Peak at XXX.XXHz(xxdB)」の読み取り)
以上四つの数値によって正確な周波数を算出できます.
スペクトランPeak at読取周波数の補正
1000Hzのトーンをサウンドカードで再生する場合、再生されるトーンの周波数はサンプリングクロックによって決まります。
サンプリングクロックが正確なサウンドカード(パソコン)に1000.00Hzを入力しスペクトランのPeak atで読取させた場合は当然1000.00Hzと表示されますがサンプリングクロック(Clock-RX)が11026.09Hzのサウンドカード(パソコン)で読み取りさせた場合999.90Hzと表示されます。
上記のサウンドカードの場合サンプリングクロックは11026.09Hzで正規のサンプリングクロックである11025.00Hzとの比は1.000098866になり逆数は0.999901144になり
補正後の数値は 999.90Hz × 1.000098866 = 1000.00Hzとなります。
それは、同じ音をサウンドカードに聞かせてもサウンドカードのサンプリングクロックがずれていると音程が違うという事を意味します。
受信機表示周波数の確認
RIT等が入っていないか確認してください。
10.001000MHz ですね。
シフト周波数の確認
1000Hz ですね。
電波形式
LSBモード ですね。
サンプリングクロック比の算出
サンプリングクロック(Clock-RX)計測値 / 11025 = サンプリングクロック比
例えば 11026.09Hz / 11025 = 1.000098866
真Peak at読取周波数の算出
Peak at読取周波数 × サンプリングクロック比 = 真Peak at読取周波数
例えば 1011.67 × 1.000098866 = 1011.77001976622
受信周波数偏差の算出
真Peak at読取周波数 - シフト周波数 = 受信周波数偏差
例えば 1011.77001976622 - 1000 = 11.77001976622 Hz
真受信周波数の算出
受信機表示周波数 + 受信周波数偏差 = 真受信周波数
例えば 50.11363 MHz + 11.77001976622 Hz = 50.113642 MHz
50.11363 MHzは3.579545 MHz NTSCテレビジョン放送の色副搬送波周波数の第14高調波です。
以上の測定によってテストした受信機の受信周波数偏差は50MHzにおいて約+12Hzの偏差があることが判りました。
一つの周波数で偏差を測定することによってすべてのバンドの偏差は比例しますので簡単な計算で全バンド算出できます。
例えば
周波数 偏差 周波数 偏差 周波数 偏差
1.9MHz 0.45Hz 3.5MHz 0.82Hz 7MHz 1.64Hz
10MHz 2.35Hz 14MHz 3.29Hz 18MHz 4.23Hz
21MHz 4.93Hz 24MHz 5.64Hz 28MHz 6.58Hz
50MHz 11.75Hz 144MHz 33.83Hz 430MHz 101.01Hz
また、測定の精度を上げるためには出来るだけ高い周波数で出来るだけ高い周波数精度の信号で周波数偏差を測定することが精度を上げる一番のポイントになります。
Many Thanks
良いソフトを作っていただいた。I2PHD JE3HHT 追試していただいた。JH5AKH